グレイとの別れ(2016年6月15日)
16年間ずっと一緒にいたグレイ。
父が生死をさまよっている時、車で実家の埼玉まで一緒に行った。
父が亡くなり喪主を務め、全てを終わらし車で戻る。
急に涙が溢れ、止まらなくなった時、シートの下にいたグレイがニャーと言いながら心配そうに膝の上に乗って来た。僕の感情を誰よりも一番理解した。
本当に色々な所に一緒に行った。
グレイとはペットというよりは対等に接して来た。
ふざけてしつこく擦り寄って怒らせ頭を猫パンチされたりした。僕はゴメンと謝った。でもそんな強気なグレイが好きだった。
クリスマスはいつも一緒にお寿司を食べた。と言ってもごはんは食べないのでグレイにはネタの半分をあげた。あっという間に食べるので僕も急いで食べなければならなかった。
13年目、人間で言うと68歳位、キャットフードを老猫用に変えた。老猫という響きが受け入れられず、キャットフード売り場の前で涙が出そうになった。
そして3ヶ月前の17年目突入、人間で言うと80歳超えた頃、そのキャットフードも食べなくなり粒の小さいものに変えた。
少しだけ食欲が戻るが残す日が多かった。
この頃から僕はごはんを食べるとうれしくて誉めてあげるようになっていた。
1ヶ月ぐらい前から外には出たがらないようになった。
寝てばかりで体重も軽くなった。
3日前ぐらいからキャットフードも大好きだった鰹節も食べなくなった。刺身もミルクも駄目だった。
6月14日、仕事を終えて家に帰るがこの日はずっと心配だった。車を家の前に止めるが、いつものグレイの声が玄関で聞こえ安心した。
でもキャットフードも鰹節も食べてなかった。目の周りが涙と目ヤニでドロドロになっていたので優しく手で落としてあげた。
急に力強く立ち上がり玄関の前で外に出すようニャーニャーと催促した。ここ一ヶ月外には出たがらなかったので、僕は嫌な予感がした。駄目だよ、帰って来れなくなるよと言った。
グレイはこんなに悲しい表情をするのかというぐらいの顔をして真っ直ぐ僕を見た。
僕は怖くなり背を向け横になった。しばらくしてグレイは僕の目の前まで来て背を向け伏せの状態をした。
僕は背中を撫ぜながら「グレイちゃん」と20回ぐらい呼びかけた。
いつもは返事をするのに返事はなかった。
喉を撫ぜると震えた感じがあったので背中に耳をつけた。小さいけどゴロゴロの音が少しだけ聞こえた。少しだけ安心した。
3分ぐらいしてゴロゴロの音が止みグレイは立ち上がりまた玄関へ向かった。外に出すようニャーニャーと催促した。
僕は涙を我慢して扉をゆっくり開けた。グレイはいつも行っていた林のある空き家の方に歩いて行った。今なら捕まえられると葛藤したが結局グレイの気持ちを尊重した。
僕はいつものようにジムに行きプールで泳いだ。涙が出てもプールならわからない。がむしゃらに泳いで、帰りに買い物に寄った。家に帰るのが怖くて、その上買いたい物が無くて困った。
家に着くといつもなら玄関の前で待っていたグレイはいなかった。
物音がすると玄関を開け探すがやっぱりいなかった。
6月13日は母の命日、そして6月14日にグレイは出て行った。15日、休みだったので海の見えるアトリエに行き引っ越しの準備をした。グレイの余生をゆっくり過ごす為の家でもあった。家に帰るとグレイを探すがやっぱりいなかった。
猫は死ぬ前に姿を消すと言う。様々な説があるが、猫は特に野生の本能で弱った所を見せない動物なのだろう。猫は回復力も凄く静かで涼しい所で半冬眠状態になり回復を待つと言う話もある。
姿を消すのは死ぬ場所を探しているのでも無く、飼い主に気を使っているのでも無く野生の本能でもっともっと生きようとして姿を消すのだと思う。いつかまた元気になって美味しい物を食べたり遊んだりする為に出て行ったのだと思う。
今は悲しくて無理だけどアトリエにはグレイの写真をたくさん飾ろうと思う。
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